たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

2007-01-01から1年間の記事一覧

においのある言葉というものがある。 あるいはにおいのある文章というものが。 それを解き明かすひとつの手がかりは「やまとことば」かもしれない。 日本語には出自の違ういくつかの言葉が含まれる。 中国から入ってきた言葉とか、英語から入ってきた言葉と…

ある芸術家の肖像 若い恋人が、言うのである。 「私と結婚したいって言ってくれてる人、 いるんだ」 問題は、その彼を 好きかどうかではないのか。 「すごく好きなわけじゃないよ。 でも、私のこと大事にしてくれそうだし ……それでもいいのかなって。 お金持…

風に吹かれる雨の記憶 教壇に立って試験監督をしていると、 午前中は晴れていた外の景色がいつのまにか黒ずんでいて、 よく見ると雨が降っていた。 二階の窓から見える外の樹々が 風に吹かれて大きく揺れ、 そこにもったいないくらいの勢いで 雨が降り注いで…

映画『終わりで始まりの4日間』

『終わりで始まりの4日間』を観た。 「若い」という感じの映画だ。悪い意味でも「若い」のだけど、いい意味での若さを評価したい気持ちになる。つまり欠点はいろいろあっても、そこにただよう野心と、「映画愛」の雰囲気に感動してしまうということだ。ザッ…

映画を採点

6月には、大量の日本映画を観たのだけど、メモしていた携帯電話が壊れ、何を観たのだか分からなくなってしまった。なんていいかげんな映画の観方だろう。というわけで7月の記録。『ブレイブストーリー』……★★☆☆☆☆ ひどいアニメ。子どもはこれでも楽しいのだ…

映画『サムサッカー』

映画『サムサッカー』を観た。すばらしい。とても誠実に作ってある映画だ。 17歳になっても指しゃぶりの癖が直らない少年が主人公。この主人公が成長していく話なのだが、主人公の指しゃぶりの癖は、映画の最後まで直らない。では、どこが成長したのか。 …

フィッツジェラルド

フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』(村上春樹翻訳ライブラリー 中央公論新社)を読んだ。高校生か大学生の時に新潮文庫で一度読んだことがある。今回もう一度読んでみて、たしかに人生についての大切なことが書かれている小説だという気がした。…

『エレファント』

ストーリーの面白さでひきつけようとする作品は、映画にしても小説にしても、本当にげんなりする。アイダホ州で起きた高校生による銃乱射事件を題材にしたこの映画の面白さは、ストーリーにはない。小説でいえば「文体」に当たるもの、画面構成とかカット割…

ある金持ちの変態男の話

ある女性が昔からの友達に求婚されているという。周りの友達も結婚しちゃいなよと勧めるその男性は、金持ちだし、性格も悪くない。ただし太っていて、しかも変態ではある。 彼のマンションで催されるパーティーでは、招かれた女性達が、クローゼットにずらり…

『なぜ、その人に惹かれてしまうのか』

森川友義『なぜ、その人に惹かれてしまうのか』(デイスカバー)を読んだ。科学的実験結果を使って恋愛のメカニズムを解き明かすという内容。 左右対称の顔・体を持っている人ほどモテる、とか、においによって遺伝子的な相性がいい異性を見分けている、とか。 …

ぼくよりも年上の詩人二人と同人誌を作ることになり、3人で「読書会」を行った。題材は『小池昌代詩集』(思潮社)。場所はつくば市の「アストロ・ラウンジ」。読書会でいろいろ話していたら、書くということについて刺激を受けたので、しばらくぶりにブロ…

「風邪を引いても人生観は変わる。人生観とは風邪の一症状である」 というのは誰の言葉だったろう。 別に風邪を引いているわけではなくて、むしろ長く引いていた風邪がやっと治ってすっきりしているのだが、 たとえば身体の血の巡りが悪いというだけでなんだ…

プラトン『ゴルギアス』(岩波文庫)を読んでいる。 プラトンを読むたびに、ほんとに紀元前の本かよ、と驚きながら読む。 すごくおもしろくて、哲学的エンターテインメントという方向性の本は現代でもたくさんあるけど、 哲学の祖といわれるプラトン(哲学の…

しばらく精神的に落ち込んでいたような気がする。 自分のことなのに「気がする」というのも変だけど、なんだか久しぶりに精神状態が安定しているようなので、 おそらくずっと心の底の方で落ち込んでいたのだ。 今日はまだ職場が開錠されていないくらい早く職…

映画『ビフォア・サンセット』

『ビフォア・サンライズ』を1回見返した後で、その続編『ビフォア・サンセット』をみた。 1 『ビフォア・サンライズ』の良さについて付け足し。 ●この映画にぼくが「個人的」な感じを得たのは、自分がヒロインの女の子に恋をしているような気分になったと…

映画『ビフォア・サンライズ』

『ビフォア・サンライズ』というタイトルは、なんとなくロマンチックでありきたりの映画を想像するけど、そんなことはなくて、とてもいい映画だった。 前に、ベルトリッチ監督の『ドリーマーズ』を観たときに書いたことだけど、ぼくにとってのいい映画の条件…

職員室を出て廊下の向こうを見ると、 遠くの渡り廊下を同僚の女教師がおもいっきり走り過ぎる姿が見えた。 一瞬の出来事で、ちょっと目を疑うくらい速かったので笑ってしまった。 で、その廊下と平行している廊下をぼくも全速力で走った。 そのときぼくはサ…

試験範囲が終わっていたので2時間目の授業は自習にした。 ひとりの生徒の机にあった本が目にとまった。手にとって見ていたら、読み途中らしくて、ここが良いのだと文章を示してくれた。 なんか、哲学めいたことが書いてある。 鈴木剛介という人の『THE ANSW…

貴重な休日。11時から3時くらいまで眠ってしまった。 起きるとすでに光が夕方じみていて、悲しくなった。 だけど、ときどき意識を浮上させながら怠惰に眠りつづけているときの背徳的なまでの心地よさは、他には代えがたい。 その時間が純粋にその時間だけで…

ずいぶん前に買って、ちびちび読んだいたせいで、読み終わったのだかまだなのだか、よく分からなかった中沢新一の本を、読み終えた。 「知的な本」というのは、意外と貴重で、むずかしいことを言っていたり、たくさんの知識を披露していたりする本はたくさん…

金井美恵子の『目白雑記』がおもしろかったので、買ったまま放ってあった『重箱のすみ』や、新たに買った『「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ』といったエッセイ集を読んでいる。 どちらも、『目白雑記』よりも前に書かれた文章が主のようで(ちゃん…

金井美恵子『目白雑記(ひびのあれこれ)』(朝日文庫)を読んだ。 金井美恵子を最初に読んだのはたしか『タマや』で、大学生のぼくはそのかっこよさにかなり興奮した。 浅田彰が金井美恵子の小説を、「何も意味のないレース編みたいな小説」と表現していた…

よるのくに 仕事から帰って ひとりでずっとテレビをみてると すべてが少しだけ遠ざかって 私だけこの世界から五〇センチ後ろに ずれてしまっているような 気持ちになる ベッドに横になり いつものように 右側の壁を見つめながら その世界に入っていく そこは…

「水の娘」

水の娘 これはある異国の町を訪れたときに日本語のうまい絨毯売りが教えてくれた話なのだが、それが事実なのかあるいは彼の作り話なのか確かめることもしないまま、ぼくの頭に住みついて、夢うつつにふとなまなましくよみがえってくることがある。 町の西側…

ドラマ『LOST』にはまっている。 今日はシーズン1の6巻を借りるはずだったのだけど、すべて借りられていて、ほんとうにがっかりした。6巻をとばして7、8巻を見てやろうかと一瞬思うけど、やめた。 無人島に飛行機が墜落し、生き残った43名が島で…

教壇に立って試験監督をしていると、午前中は晴れていた外の景色がいつのまにか黒っぽくなっていて、よく見ると雨が降っていた。二階の窓から見える外の木々が風に吹かれて大きく揺れ、そこに、もったいないくらいの勢いで雨が降り注いでいる。木々の向こう…

映画を採点

『ディボース・ショウ』(コーエン兄弟)……★★★☆☆☆『ドリーマーズ』……★★★★★☆『スコルピオンの恋まじない』……★★☆☆☆☆『フェリックスとローラ』……★☆☆☆☆☆『ラック』……★★★★☆☆ 《観た映画を6段階の★で評価》 ★☆☆☆☆☆……駄作 ★★☆☆☆☆……ふつー ★★★☆☆☆……おもしろかった ★…

昨日の晩、読みかけのままで本棚に置いてあった大江健三郎の『静かな生活』が目に付いて、手に取ってぱらぱらめくっていたら、字面が妙に魅力的なので、しばらく読んでみた。 「字面が魅力的」というのは、長年の読書経験から培われた勘のようなもので、実際…

社会生活を送ることは、それだけでかなりのストレスである。 今日は勤め先の高校で「辞令交付式」というものが催され、「儀式」というのはそれだけでこっけいだなあ(注1)と思いつつも、昨日おとといとのんきに過ごしていたせいか、かなり疲れた。 でも、…

映画『珈琲時光』

一青窈はすばらしい。人間として。 というほど何もしらないのだけど、テレビに出ている一青窈を見ると、なぜかこの人はすばらしい人だと思えてくる。 そして、ぼくも良く生きよう!という気持ちが湧き上がってくる。 良く生きるとは、道徳的に生きるというこ…