たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

試験範囲が終わっていたので2時間目の授業は自習にした。
ひとりの生徒の机にあった本が目にとまった。手にとって見ていたら、読み途中らしくて、ここが良いのだと文章を示してくれた。
なんか、哲学めいたことが書いてある。
鈴木剛介という人の『THE ANSWER』という本。図書室で借りたらしく、カバー裏に帯が貼り付けてあるのだが、そこには「哲学小説」と書いてある。
本当はやることがありまくっているのだが、わざと余裕をこいて豊かな時間でも過ごしてやろうと生徒に自習をさせながらその本を読んだ。


途中までしか読んでないのに悪口を書くのは、ほんと卑怯なようだけど。
方向性としては、とても興味がある感じなのだが、すごくうさんくさい。
主人公は自称「哲学病」で、頭がおかしくなりかけらしく、いまだかつてない哲学的境地に達しているという設定らしい。
ずいぶん大上段にかまえたものだと思う。
さまざまな哲学者や思想家、小説家、マンガ家などの名前が出てきて、小説と哲学が組み合わされる感じで哲学解説が行われていた(読んだのは途中までだけど)。

以前ベストセラーになった『ソフィーの世界』という本の名前は、この小説の中にも出てくるけど、結局、この小説も『ソフィーの世界』と同じ、哲学からはすごく遠い小説だと思う。


ことばが、「自分」から発していない、というこの感じが、ぼくが「うさんくさい」と思った正体だ。きっと。
哲学は(小説も、人間のすべての発言も)、「自分」から発していることが、そこに価値があるかどうかを計る大切な基準だと思う。
この小説の中にでてくるたくさんの固有名詞(哲学者とかマンガ家とか)の下品さは、それが、「自分」のなさ、節操のなさの象徴だからだろう。

でも、amazonで評判を確認してみたら、けっこう評価が高かった。ふーん。