たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

教壇に立って試験監督をしていると、午前中は晴れていた外の景色がいつのまにか黒っぽくなっていて、よく見ると雨が降っていた。二階の窓から見える外の木々が風に吹かれて大きく揺れ、そこに、もったいないくらいの勢いで雨が降り注いでいる。木々の向こうには、蒼みを帯びた遠くの森が、手前とは別のリズムで揺れている。そのうち雷も鳴り出した。雨と風と雷の音。


その景色を見ながら、ぼくはとても心細くて、しかも懐かしい気持ちになっていて、この気持ちはなんだろう、と考えていた。


一つの絵を思い出す。
ぼくがもっとも好きな絵、アンリ・ルソーの「Tigea in Tropical Storm /Surprised!(不意打ち!)」だ。
この絵を見たときの感じとあの感情は同質のものだと思う。
自然の真っただ中にいる孤独と、同時に感じる懐かしさみたいなもの、それは、生きるということの原始的な心細さを呼び起こされるような、特別な感情だ。


まあ、絵を見ても、本当に自然の中にいるわけではないし、今日の景色も、少しも雨に濡れることのない部屋の中から見ていたわけだけど、いつか、本当にでっかい自然のなかで、激しい雨に打たれてむちゃくちゃ心細い気持ちになってみたい。
でも、その後すぐにあったかい温泉に入りたい。