たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

『エレファント』

ストーリーの面白さでひきつけようとする作品は、映画にしても小説にしても、本当にげんなりする。アイダホ州で起きた高校生による銃乱射事件を題材にしたこの映画の面白さは、ストーリーにはない。小説でいえば「文体」に当たるもの、画面構成とかカット割りとか編集の仕方とか、よく分からないけどそんな感じのものが面白いのだと思う。とにかく、途中まで普通の高校生たちの何気ない日常が描かれるだけなのだが、それがただひたすら面白いのだ。この高校のすべての生徒の日常をこの「文体」で描いてほしいと思うくらい…。
…などと思っていたら、この映画の監督ガス・ヴァン・サントは、『小説家を見つけたら』も監督していた! 最悪な映画!と思っていた(たしか星一つをつけた)のに……。映画の「文体」みたいなものは、監督のかなり根本的な資質によると思ってたんだけど、どういうことだろう?
おそらく他の映画(『ドラッグストア・カウボーイ』や『グッドウィル・ハンティング』)から想像すると、この監督は、本質的には下司なんだけど、映像的なセンスはある、ということじゃないかと思う。そして、映画監督の才能で重要なのは、何よりも映像的センスではあるだろう。『小説家を見つけたら』の監督だと気づく前ほどは素直に賞賛する気になれないけど。

※ その後もう一度見返したら、この映画の不誠実さが鼻についた。アカデミー賞(だっけ?)の選考委員も、もう一度見返したら、違う結果になったんじゃないかな。知らないけど。

映画を採点:『エレファント』……★★★★☆☆



《観た映画を6段階の★で評価》

 ★☆☆☆☆☆……駄作

 ★★☆☆☆☆……ふつー

 ★★★☆☆☆……おもしろかった

 ★★★★☆☆……すごくおもしろかった

 ★★★★★☆……傑作

 ★★★★★★……傑作! 自分にとって特別な作品