たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

ある金持ちの変態男の話

ある女性が昔からの友達に求婚されているという。周りの友達も結婚しちゃいなよと勧めるその男性は、金持ちだし、性格も悪くない。ただし太っていて、しかも変態ではある。
彼のマンションで催されるパーティーでは、招かれた女性達が、クローゼットにずらりと並んだコスプレ衣装に着替えさせられる。そんな人物なのだが、周りの人達は彼の良識を信じている様子である。その女性に対する好意を公言する彼が、彼女を寝室に拉致しても、友人達は笑いながら送り出してくれる。彼も「〇〇ちゃん、なんて大胆なの?そ、そんなふうにしたらすぐにイッちゃうよ……」などとみんなに聞こえるように言うだけで、もちろん実際には何もしてこない。あるときは突然電話してきて、「今夜は〇〇ちゃんをオカズにするよ」などと報告する。
大学時代はやせていて彼女もいたという彼の、変態としてのその開き直り方には、なかなか趣深いものがある。どんな美しい女性にも現実の姿というものがあって、イリュージョンとしての女性をしのぐ存在はないと確信し、ならばイリュージョンだけを追い求めようと決心したかのようだ。恋とは追い求めている瞬間のことであるなら、自らモテない存在に甘んじることで永遠なる恋が成立すると考えている。そんな人物に思えて、面白かった。