たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

〈あらすじへの言及あり〉
身体障害者の女の子ジョゼとの恋の話。
というと、なんかイメージしてしまうものを裏切る映画で、とてもよかった。


主人公の大学生、恒夫が倫理的な人物として描かれていないのがいい。
印象的なのが、江口徳子演じる女(どっちかというとちょい役だけど、とても印象に残る。魅力的)と、
セックスを終えてから、自分に好意を寄せているらしいかわいい系の女の子のことを話してにやにやする場面だ。
こういう話で道徳的な流れに行かずに済んでいるのは、恒夫の性格に負うところが大きい。


それから、ジョゼの描き方もいい。
口が悪くて、サガンが好きで、
つまり、批評性があって、中身があるということだ。
ただのよい子ではない。


恒夫のかわいい系の彼女がジョゼにびんたをして「障害者のくせにひとの彼氏とらないで」みたいに言う場面も、よかった。
福祉に関心を持っているその彼女が、障害者のお世話をする、とかじゃなくて、一人の女として対等に張り合うというのは、ちょっとあざとい気もするけど、素直にすがすがしく感じた。


旅行先のラブホテルでジョゼが語る言葉は、障害を持っているがゆえの孤独みたいなものを語っていて、もっともこの映画が深さを示す場面だ。
映画でも小説でも、重要なのは「特殊な状況を描くことで普遍性に到達する」ことだと思うのだけど、この場面は、ジョゼの孤独を通して逆にすべての人間に通じる普遍的な孤独を感じさせる。この映画が傑作だと思う理由である。


映画を採点:★★★★★