たらたら神秘主義

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映画『ビフォア・サンセット』

『ビフォア・サンライズ』を1回見返した後で、その続編『ビフォア・サンセット』をみた。


1 『ビフォア・サンライズ』の良さについて付け足し。
 ●この映画にぼくが「個人的」な感じを得たのは、自分がヒロインの女の子に恋をしているような気分になったということだと思う。単純でバカみたいだけど、それが良い恋愛映画の条件ではないだろうか。
 とにかくセリーヌという女の子がとても魅力的で、人生の輝ける一瞬がフィルムに焼きついているという感じがする。ジュリー・デルピーという女優が演じている。「ゴダールに才能を見出された」とか「『ビフォア・サンセット』では脚本にも参加している」とか、どうやら立派な女優なんですね。
 ●あんなにおびただしくセリフばかりが充満していたら映画的でない、という批判もありそうだと思うのだけど、その大胆さがすばらしい。
実際、この二人にとっては、「会話」によって、相手の心と自分の心が溶け合っていくような感覚を得るのであって、二人にとって、その夜の時間は、「会話」と「相手の顔」で成り立っているようなものであるはずだ。


2 『ビフォア・サンセット』について(ストーリーについての言及あり)
 ●『ビフォア・サンライズ』から9年後の話。
  とても、渋い映画だ。ほとんどが二人の会話によって成り立っているのは、『ビフォア・サンライズ』と同じ。むしろその方向性がいっそう極まっている。
 ●率直でありえないところが「大人の恋」である、という感じで、映画自体、大人の恋の複雑さを象徴するように、煮え切らない。だけどそこが良いところだ。映画の終わり方に驚いたけど、もう一度見返したら、そのじんわりくる感じこそが、大事なのだとよく分かる。
 ●俳優たちが9年間で、どう老けたか、ということが興味深い。とくにあの溢れる魅力を発散していたジュリー・デルピーは、どうなったか? ……彼女自身が脚本に関わっているせいもあるのかないのか、まるで、外見としての彼女の老け方を象徴するような映画になっている。32歳にしては、枯れすぎていないか?という気がするけど、セリーヌのような人生を送るとそういう32歳になるのかなあ、とか思いながらみていた。
 ●とにかく、『ビフォア・サンライズ』という作品の後で、どういう続編を作れるだろうか、と考えたときに、かなり優秀な落とし前のつけかたをしていると思う。
 ●でも、半年後この場所で会おう、という約束の日におばあちゃんのお葬式をすることになってしまったなら、ぼくなら、誰かに伝言を頼むとかするけどなあ。気が動転していて思いつかなかったということだろうか。


映画を採点:『ビフォア・サンセット』……★★★★★☆


《観た映画を6段階の★で評価》

 ★☆☆☆☆☆……駄作

 ★★☆☆☆☆……ふつー

 ★★★☆☆☆……おもしろかった

 ★★★★☆☆……すごくおもしろかった

 ★★★★★☆……傑作

 ★★★★★★……傑作! 自分にとって特別な作品