たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

花輪和一の『御伽草子』を読んだ。
この人の刑務所体験マンガ『刑務所の中』がすごくおもしろかったので、他の作品も読んでみたのだ。
最初は『刑務所の中』ほどおもしろくないなあと思ったけど、だんだん毒がきいてくる感じで引き込まれる。このあやしい世界観と、あやしい動物や人物や神などの持つ迫力は、さらっと読み飛ばして終わり、にはならなくて、なんか頭の中に変な種をまかれたような異物感がある。


この世界観や登場する者たちの持つ迫力は、たんなる思い付きでは出せないものだ。心の奥の方から(無意識の世界から)引っ張り出してきたからじゃないかと思う。だから、この前ここに書いた山本直樹の『ラジオの仏』の持つ夢の迫力とも通じている気がする。非現実的な世界観には、こうした迫力が必要だ。でないと、ただの軽いファンタジーになってしまう。


この『御伽草子』の不思議な世界観は、諸星大二郎のマンガと似ている感じもするけど、人間の愛憎が描かれているところがちょっと違うかも。
人間の愛憎と言っても、ここに出てくる人たちの感情は、どうも普通とは少しずれている感じがあって、そのあたりもおもしろい。
たとえば、自分のじいさんが雨乞いのための生け贄になっても、平然としている女の子とか。
ストーリーだけでなく、登場人物の感情もありきたりなマンガや小説がたくさんあるから、こういうのを読むと心が洗われる感じがするなあ。