たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

アメリカのテレビドラマ『ツイン・ピークス』が放送されたのは1990年から1991年らしいから、もう20年近く前の作品になる。それを今さら見た。
日本でもブームになったのは覚えていて、ローラ・パーマーという一人の少女の殺人事件に端を発してツイン・ピークスというアメリカの田舎町のさまざまな人間模様が描かれるというのが魅力的だし、監督のデイビッド・リンチは『ワイルド・アット・ハート』に感動して以来好きなので、以前から気になっていた。


見ているあいだ中、どうやって作ったんだろうということを想像していた。おそらくかなりいいかげんに、行き当たりばったりでストーリーを作っていったんじゃないだろうか。普通、ミステリーというのはおそらく結末(犯人が誰か、とか)を最初に決めておいて、それに向かって話を進めていくのだと思うのだけど、『ツイン・ピークス』の場合、犯人を決めたのはかなり話が進んでからだと思う。作り手もそれが何を意味するのかが分からないまま、さまざまな出来事を並行して起こしていって、物語自体に(あるいは作り手の無意識に)その意味を任せて行くという作り方だと想像するのは、物語の中で事件を解決していくFBI捜査官のデイル・クーパーの、神秘主義的な直観を信じた捜査方法と重なるからだ。


このドラマの魅力の一つは、人々の裏側が明らかになる点。もう一つは、この世界の裏側にもうひとつ別の世界があるという神秘主義的設定にあると思う。話が飛躍するようだけど、宗教の一番の魅力というのはおそらく、それを信じることによって奥行きのある世界観を得られるということにあるのではないだろうか。無信仰者のぼくは、なかば意図的にそうした世界観を構築しようと思っているのだけど、『ツイン・ピークス』という作品においても、作品世界の奥行きを作り出すために、かなり意図的に「ホワイト・ロッジ」とか「ブラック・ロッジ」とか、小人のいる赤い部屋とかが導入されているのではないかと勝手に想像する。


この世界に奥行きをもたらすためのアイテム。
1 自分の心の奥(無意識)
2 他人の心
3 他人の生活
4 夜の世界
5 宇宙
6 魂
7 神
8 幽霊
9 身体
10 自然


※ これを書いた後で調べたら『ツイン・ピークス』が行き当たりばったりで作られていったのは、かなり有名な当然のことみたいだ。たしかに第2シーズンなんか、ちょっとふざけすぎで、最後に無理やり収束させた感じがする。第3シーズンを作るつもりがあったけど、打ち切りになったらしいとどこかのブログに書いてあった。んー、残念でもあるけど、打ち切られるのも分かる気がする。魂から出た行き当たりばったりじゃなかったら、力がなくなる。