たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

ここしばらくの「トイレ本」(自宅トイレだけで読む本)は『シャーマンズボディ』(アーノルド・ミンデル著、コスモス・ライブラリー)だった。かなりあやしげな内容だけど、おもしろい。
ぼくにとって「神秘主義」とは、フィクションである。というか、世界は、自分というフィルターを通してしかとらえられないのだから、世界がすなわちフィクションなのだけれど。で、その世界をいっそう魅力的にするために、いわゆる神秘主義というフィクションはかなり有効ではないかと思っている。


『シャーマンズ・ボディ』には、たとえば「ドリーミング・ボディを生きる」という言い方が出てくる。意識という狭い世界の価値観にとらわれることなく、「夢・無意識・身体」の声に耳をすまして生きること、らしい。周囲の人間関係や社会的価値観からは否定されるような行動であっても、自分の内なるシャーマンの声に素直に従うならば勇気を持って行うべきである。とか。そんな感じ。


昨日近所の本屋で平積みされていた『風の谷のあの人と結婚する方法』という文庫本を手に取った。ずいぶん売れた本らしいけど知らなかったし、ぼくはテレビを見ないので、作者の須藤元気という人のこともまったく知らなかった。格闘家だったらしくて、でも、文庫本をぱらぱらとめくってみた感じは、知性とユーモアが混じった、かなり魅力的な人物を想像した。


購入して、自動車屋でオイル交換をしてもらいながら読んだ。森沢明夫という人の質問メール(学びについてとか、人間関係についてとか)に答える形で須藤元気がいろいろ述べているのだけど、照れ隠しの冗談が混じっているとはいえ、中心にあるのは、かなり本気の神秘主義的視点だ。とてもおもしろい。


ウィキペディアで調べたら、格闘家は引退して、おそらく政治家を目指して今は大学院で勉強しているらしい。直感を信じて波乗りをするように生きる姿勢や、神秘主義を含めた教養を背景とした大胆な生き方が、印象的だ。あきらかに自分の人生をゲームとして俯瞰からとらえ、しかも実際に、人生のハンドルを身軽にすいすいと切っていくあたり、うらやましいくらい、みごとだと思った。


ウィキペディアの記述を見ていたら、須藤元気神秘主義的視点の背景には、カルロス・カスタネダの本があるようだ。『シャーマンズ・ボディ』の著者ミンデルの考え方ももとはカスタネダから来ている。何気なく手にとって何気なく買った本が偶然こんなふうに現在のトイレ本につながる、というのは、まあよくあることだけど、須藤元気だったらシンクロニシティというのだろう。たしかに、こうした偶然の一致には、したがったほうが人生はおもしろい方向に進む気がする。


それとも、神秘主義的な考え方が現代において今までになく一般化しつつあるのだろうか。