たらたら神秘主義

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映画『ラック』

映画『ラック』を観た。


恋人に振られた(と思い込んだ)男がギャンブルにはまっていく話。
という筋書きだけではなんだか全然おもしろくなさそうだけど、さりげない演出が効いたとても良い映画で、何よりギャンブルのどきどき感を疑似体験できる。
この映画を観て、ギャンブルとは何か、を初めて理解できた気がする。


ギャンブルというのは、自分の一瞬の判断で運命が左右されるというどきどき感によって、生きていることの手ごたえを感じようとする行為なのだなあと思った(実際そんな感じのセリフが出てくる)。
『サバイバル登山家』の服部さんは、生命の危険をかけることで「生きていることの手ごたえ」を実感しようとした。
それから、この映画の主人公は恋に破れてギャンブルにのめり込んでいくわけだけど、恋愛のドキドキ感もギャンブルと共通するものがあるかもしれない。ある人を手に入れられるかどうかというギリギリの緊張感とか、ある瞬間に関係ががらっと変わってしまうあたりとか。
ギャンブルとか、生命の危険とか、恋愛とか、手段は違うけれど、みんな生きていることの手ごたえを求めてあがいている。


よく難民の子供たちの笑顔がすてきだとか、言ったりするけど、生きるということが当たり前の世の中よりも、生きていられることがありがたい世の中にいる人の方が、生きていることを実感しやすいのは当然だと思う。
平和で豊かな世の中に生きる者たちは、自ら生きる手ごたえを探さなければならない。
そして、この問題におけるもっとも正しい対処法は、「生きている」ということが、どんなに不思議なものであるかを、とことん考えて実感することである。
訓練によってそれは可能なのだし、それによって日常が輝くだけでなく、人生の諸問題もだいたいは大したことのないものだと考えられるようになるのだから。


ちなみにこの映画の主人公が恋する女の子をどこかで見たことがあるなあと思ったら、『死ぬまでにしたい10のこと』に出ていた女優で、名前はサラ・ポリーというらしい。表情が魅力的だ。


映画を採点『ラック』:★★★★☆☆


《観た映画を6段階の★で評価》
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 ★★★☆☆☆……おもしろかった
 ★★★★☆☆……すごくおもしろかった
 ★★★★★☆……傑作
 ★★★★★★……傑作! 自分にとって特別な作品