たらたら神秘主義

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映画『ビッグ・リボウスキ』

映画『ビッグ・リボウスキ』を観た。

この主人公は、すこしもかっこよくない。
ひげ面でいかにもさえないおっさんだし、いつもぼろっちい服をきているし、なまけものだし、失業しているし、別に勇敢というわけでもないし、すけべだし、正義を尊ぶわけでもない。
では、ぜんぜん魅力的ではないかというと、これがすごく魅力的なのだ。
この主人公、デュードの魅力というのがこの訳のわからなくつかみ所のない映画のポイントなのではないかと思う。


この主人公の魅力は、なまけものということだ。
何か(信念だとか出世だとか金だとか成功だとか)に向かってがんばることをしない。
それは、ある意味すごくかっこいいことだと思えてくる。
何よりも、彼は自由なのだ。
信念だとか出世だとか、なんだとか、そういうものに向かって生きている人がとても不自由に見えてくる。


映画の最初、主人公のデュードが紹介されるところで、「この話は、1991年、すなわちアメリカがイラクに侵攻した年のことだ」みたいなナレーションが入る。
ブッシュ(パパ)の演説がテレビに映る。
正義だかなんだかをかざして戦争をしかけるブッシュと、この主人公デュードは対照的な人物として描かれているのだ。


で、この映画の映像としてのスタイルも、この主人公と重なる。
(これはとても大事なことだ。
内容が主張していることと、映像が主張していることが違っているということがよくある。
たとえば、人生の真実みたいなセリフをはく、頭のいい人物が出てくるのに、映画自体が超バカな場合とか。『小説家をみつけたら』なんかがその最悪なタイプ)
ビッグ・リボウスキ』の映像は、とても誠実に作ってあるけど、どこかで、「すべてはどうでもいい」的ないい加減さがある。(でっかいボーリングの球につぶされそうになる場面とか)
そのへんが、主人公の生き方と重なる。
映画全体が、適当な生き方こそが誠実なのだと言っている。かっこいい映画だ。

映画を採点:『ビッグ・リボウスキ』★★★★☆☆