たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

映画『バニラ・スカイ』

映画『バニラ・スカイ』をみた。
「何が本当のリアルか?」系の映画で、もっと分かりにくくて混乱させられるのを覚悟していたのだけれど、
意外と分かりやすい。トム・クルーズが主演の映画なんて、これくらいが限度なのかもしれない。
ぼくは何が現実なのか分からなくなるという作品に弱いので、それだけでおもしろくみてしまう。


でも、同じく「何がリアルか?」の映画でも、作品のレベルは『メメント』の方が上だ。
単に観る者をだます仕方が巧妙なだけではない。
自分の生きているこの現実に対して、違和感をおぼえる度合いが強烈なのだ。
メメント』を観たあとは、記憶という不安定なものに依拠しているこの世界というものがとても不思議なものに見えたものだ。


この現実の自明性を疑う作品をおもしろく感じるのは、もちろん、たとえばその映画を観る自分にとってのこの世界も疑ってしまうからだ。
そして、この世界は、あたり前のものとして受け入れている時より、不思議なものとして見た方が、ずっとおもしろい。
この世に生きることの不思議さに立ち戻らせてくれる作品は、それだけで価値がある。

映画を採点:★★★☆☆☆