たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

タイトルから想像してしまうよりずっと豊かで、誠実な本で、
久しぶりに大きく心に響いた。


精神科医としての経験から、ひとの心の苦しみや、人間的な成長について書いているので、
それは河合隼雄みたいなものか、と言われれば、まあ、似ていると答えるしかないのだが、
そして、河合隼雄はたしかに立派なのだろうが、
その清新な感じとか、具体的な方法論の点だとかにおいてだろうか、
もっと豊かなものを汲み取った気がする。
あるいは河合隼雄は本を書きすぎだったのに対して、この本にはこの人がそれまでのすべてを注ぎ込んだような力がこもっているからかもしれない。


詩人たちやニーチェ空海など、古今東西の言葉を散りばめながら、それらが上滑りせずにきちんと消化されたものとして響いていくる。


震災後の世の中の雰囲気も含めて、いろいろともやもやしていたものが、すっきりと解けた気がする。軽薄な新書たちとともに並んでしまうのがかわいそうな良い本だと思った。


あまりにも読みやすいのが、少しひっかかるけど、読みやすいのが悪いはずもなく。できれば時間をおいて読み返してみよう。