たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

今日は休みだ。
昼寝から目覚めると雨がやんでいて、寝室が午後の黄色い光に照らされている。


北側の窓を開けて、ベッドに膝をついたまましばらく外を眺めていた。
アパートの2階にある寝室からは、すぐ裏手の小さな畑と、その向こうに何件か並んでいる家が見える。
北側のその風景の中には、実際に足を踏み入れたことはなくて、だから常に窓から眺めるだけの世界だ。
そのせいか、なんだか現実感がない。
まるで、舞台セットのように用意された場所か、だれかの作った箱庭のように思える。


家々の上に広がる雨上がりの空が美しくて、これがバニラスカイというやつかあと思った。
左手の畑の中に犬小屋があるのだけれど、たいてい犬はこちらからは陰になっているあたりにいる。今日も耳だとか尻尾だとかがちらちら見え隠れしているだけだ。
奥の方に見える家からは、うっすらと煙が上がっている。その家の近くにはこのまえ散歩の途中で行ったことがある。何に使うのか、材木がたくさん置いてある家だ。その煙の匂いが、午後の澄んだ空気の中にかすかに混ざっている。
一匹の猫が視界の中に歩いてきて、裏の家の庭にあるニワトリ小屋に近づいていく。
そうして眺めている間にも少しずつ風景のなかに闇が染み出してくる。いつのまにか、一軒の家の二階に明かりがついている。他人の家についている明かりはなぜか切ない。


というような時間をすごした。
うっすらとあまったるく春の雰囲気がある。春はいい。