たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

山本直樹の『ラジオの仏 山本の夢辞書1975-2004 』(平凡社)を買った。
「他人の夢はつまらない」とよく言うし、そう思うことも多いけど、
結局、話がおもしろいかどうかは内容ではなくて、語り口の問題ではないかと思う。
この中に載っている夢をぱらぱらといくつか読んでみたけど、すごくおもしろい。
あるいは、おもしろい人間の見る夢はおもしろく、つまらない人間の見る夢はつまらないのだろうか。


パワーのある夢というのは、現実から夢の世界に引き込む力を持っていて、
逆に言えば、その世界を想像することで、現実が少し遠ざかる。


しばらく前に、仕事がなんだかつらかった頃(まあ、今だってつらいことはあるけど)、
頭の中で、ある世界を空想して、その世界に半分住んでいたことがある。
それは例えば、塔の最上階にある見晴らしのいいプールに閉じ込めらた少女であったりした。
空想した世界は今も記憶しているが、それは今では夢と区別がつかないような感じになっている。


魅力的な空想世界を創り出すことは、けっこう楽しい作業だった。最近やってないけど。
カフカが夢中になったのも、そういう作業ではないだろうか。
『審判』にしても『城』にしても、単純に魅力的な世界とは言えないけど、でも、
魅力的な気もするなあ。


ぼくらが生きているこの世界というのは結局、脳の中にある世界であって、
だったら、空想の中の世界と、現実世界の間には、根本的な差はない。
空想の世界を生み出すとき、ぼくはその世界の神となる。