たらたら神秘主義

本と映画と音楽と日常、できれば神秘

  兄弟


もしかしたら
ぼくには遠くに兄弟がいて、
ぼくとは少しもかかわりのない人生を
生きているんじゃないのか。


近くにはゆたゆたと黒い河が流れていて、
兄弟は
赤く目を充血させた産婆によって
取り上げられる。


ぼくとは一生かかわることのない
ひとりの少女に恋をして
夕暮れの空の向こうを
二階の窓から眺めたりする。


じっと沈み込み
心の中をのぞき込むとき、
あるいは夢の
その奥で
ぼくらはかすかに共鳴する。


兄弟の命のふるえを
どこか遠くに
聞くことがある。


               010302