兄弟
もしかしたら
ぼくには遠くに兄弟がいて、
ぼくとは少しもかかわりのない人生を
生きているんじゃないのか。
近くにはゆたゆたと黒い河が流れていて、
兄弟は
赤く目を充血させた産婆によって
取り上げられる。
ぼくとは一生かかわることのない
ひとりの少女に恋をして
夕暮れの空の向こうを
二階の窓から眺めたりする。
じっと沈み込み
心の中をのぞき込むとき、
あるいは夢の
その奥で
ぼくらはかすかに共鳴する。
兄弟の命のふるえを
どこか遠くに
聞くことがある。
010302